80歳を超える高齢の叔母。若い頃は都心でデパートガールをしていました。器量良しで、多くの富豪の方に可愛がられていたそうで、当時珍しかった海外旅行へも何度も連れて行ってもらったそうです。
そんな叔母、デパートガールを辞めてからは生まれ育った場所に帰ってきました。蓄えたお金で土地を買い、家を建てました。結婚せずに独身を貫いていますが、きれいなお洋服を着て、宝石を散りばめて…おひとりさまの悠々自適な暮らしを楽しんでいました。
義理の姪である私にも、昔の武勇伝とか、自分ひとりの財力で家を建てたこととかを、よく自慢していました。
しかし、80歳に近づいたあたりから、少しずつ足腰が衰え始めました。買い物に行くのも億劫になり、やがて認知症気味にもなってしまいました。
そんな矢先に突然、叔母は庭で倒れてしまったのです。
幸いご近所さんが発見してくれて、すぐに救急車で運ばれたので、命に別状はありませんでした。しかし、これ以上の独り暮らしは危険だとの判断から、そのまま老人保健施設に入所することになりました。
老人保健施設はリハビリをして家に帰ることを目標にしているのですが、叔母は足腰もどんどん弱くなり、さらに認知症も進み、現時点で家に帰るのは絶望的な状態です。
そうなると…今は誰もいない叔母の家を、親戚で何とかしなければいけません。名義が叔母のままでもし亡くなってしまうと、いろいろな手続きをするのに兄弟姉妹の印鑑が必要になるらしいのですが、叔母は何と9人きょうだい!しかも全国に散り散りになっているので、今から印鑑を集めて回るのは大変です。
そこで、まだ叔母が元気なうちに名義の変更をしたほうがいい、と親戚にアドバイスされました。立場上、うちの旦那さんの名義になると思われます。
誰もいなくなった叔母の家には、叔母が大切にしていたであろう高級なお洋服や宝飾品がたくさんあります。でも、すでに施設に入ってしまい、認知症が進んでしまった叔母には、はっきり言ってそれらは必要ないもの。譲るなり、買い取ってもらうなり、最終的には何らかの形で処分しなければなりません。
自分の土地や家、お洋服や宝飾品を所有することに価値を見出し、執着し、自分のステイタスにしてきた叔母。しかし、結局は望まない形で手放さざるを得なくなってしまったのです。
所有欲が強ければ強いほど、なかなか自分の所有物を手放すことができず、結果としてこうなってしまうんだな…と、改めて気づかされました。
このエピソード、夜の時代から昼の時代へと意識が移ってきていることを意味するひとつなのかな?という気もしています。
追記:ふと思ったことですが…
お金や所有物に執着している人ほど、認知症になる率が高いような気がするのは、私だけでしょうか。
いつまでもお金や所有物を手放せずにいる人ほど、認知症になることで強制的に手放さざるを得なくなっているような?気がするのです。
お金は巡り巡るもの。所有物だって1人だけのものではなく、みんなで共有していくという考え方が、これからの主流になってくるはずです。
自分の道具などを大切に使っていくことも重要なのですが、執着心を手放すこと自体が大事なことだと思います。