Work "OUR" Light 〜Juan's blog〜

ブルーレイチルドレンJuanの、スピリチュアルな?つぶやき

救いの手

まだ若いとき、高校教師をしていた頃の話です。

初めて担任を持ったクラスは、高校1年生の女の子のみが24人。今思えば、いろいろな悩みを抱えている子が多いクラスでした。家庭内不和が原因で母親に暴力を振るってしまう子、物を盗むことで欲求不満を満たそうとする子、家では普通に話せるのに学校では全く言葉が出てこない子、椅子に落ち着いて座っていられずに歩き回る子、親が仕事でいない間に友達を家に呼んで夜な夜なドンチャン騒ぎをする子、犯罪者である実の兄の風評被害に怯えながら過ごしている子、平気で万引きをする子、隠れてタバコを吸う子…私のクラスにいた子たちの多くはこれまでに、あまりに波瀾万丈すぎる人生を送ってきていました。

 

そんな中でも、片親である父親との関係に悩み、学校で問題行動を起こしてばかりいる子がいました。私なりに彼女に寄り添って、電話で数時間話を聞くこともありましたが、私の手には負えず…結局、学年主任の先生がその子の面倒を見ることになりました。でも今思えば、学年主任の先生は大人の汚いやり方で、その子と取引をしていたんです。結局その取引が上手くいかず、その子が退学に追い込まれる状況になってしまい…いざそうなったら学年主任は手のひらを返して、その子を完全に突き放しました。

 

そして事件が起きました。その日は先生方の歓送迎会があり、先生方が次々と学校を後にする中、例のその子が仲間を引き連れて学校に乗り込んできたのです。ひとまず担任の私が対応せざるを得なかったのですが、もう退学が決まっているその子はやりたい放題で、学校でタバコを吸い、私に暴力を振るい、今までの鬱憤を晴らすかのような行動を取り始めたんです。

その子たちの対応をしているうちに、校舎には警備会社が入って施錠されてしまいました。私は自分の荷物が校舎内に残ったままで、お金も携帯も車のキーもない状況…そんな中でその子たちは、私を無視して相変わらずやりたい放題で、しまいには花火まで始めてしまいました。私は花火をやめることとか、タバコをやめることとかを訴えるのが精一杯でしたが、当然新米教師の話なんてその子たちが聞くはずもなく…。

結局その子たちを残したまま、私は茫然とした状態で家に帰りました。荷物もお金もないけれど、とりあえずタクシーに乗って、家に着いてからタクシー代を払いました。自分のあまりの無力さに絶望した私は、もう教師を辞めるつもりでいました。

その日の夜、同じ学年の先生たちから自宅に電話がかかってきました。私が家に帰った直後、歓送迎会から戻った先生方が、その子たちに家に帰るように言って下さったそうで…私ひとりに対応させてしまったことへの謝罪と、明日必ず学校に来てほしいこと、クラスの子たちと話し合いの場を持つことなどを電話で話してくれました。

 

そして翌日。校長先生が特別日課を組んで下さって、私自身は職員室に待機し、学年の先生方が交代で私のクラスの子たちに話をして下さいました。このクラスが抱える問題点を子供たちに出してもらい、担任である私との関係を含めて、たくさん話し合ってくれたそうです。

そして最後に私がクラスに戻り、子供たちも私を担任としてひとまず受け入れてくれました。もちろんぎこちなさはありましたが、あの時私に暴力を振るってきた子たちも含めて、その後も何とか同じクラスでやっていくことができました。(ちなみに、この状況を作り出した張本人である学年主任は、この問題からは完全に外れました。)

もともと問題を抱えている子が多いクラスだったので、その後も退学をする子が何人か出てしまいましたが…あの時私と揉めて辞めていった子は、その後私と街でバッタリ会っても、普通に声をかけてくれました。

 

私が人生最大のピンチに陥ったあの日。私を救ってくれた同じ学年の先生たちは、私のことを心から心配してくれていました。同時に、クラスの子供たちのことも心配してくれていて、だから健全な話し合いの場を設けてくれたんですよね。

困難に陥ったとき。ピンチに陥ったとき。必要なのは、こういう健全な救いの手だと思います。

どちらかに偏ることなく、両方の立場に立って、今起きている問題について考えること…今のウクライナとロシアにも必要なことだと思います。

ウクライナの民間人が悲惨な状況に追い込まれていることで、どうしてもロシアばかりを叩きたくなる気持ちはわかるんですけどね…相手を叩き続けている限りは、争いは終わらないですよ。本当に。

争いを本当に終わらせるためには、まずは自分自身が争いに飛び込まないことです。その上で何ができるのか?を、考えていかなきゃいけないですね。

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